ツール最強のヒルクライマー
激動の人生を綴った壮大な物語
このスポーツに一度、踏み込めば、そこから逃れられない衝動に駆られる。 これは、山に挑んだ男の特別な物語である。アルプスの山々は、その戦いの劇的な背景として描かれる・・・
ダブルツール ―
誰しもが、もう達成する者は現れないと考えていた。
1998年イタリアの若者、マルコ・パンターニはツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア制覇を成し遂げた。
その後現在まで、この偉業を達成した者は出てきていない。
パンターニは紛れもなく英雄だった。
ドーピング問題で、崩壊の危機に瀕していたロードレース界の救世主。
ファンは彼をイル・ピラータ(海賊)と呼んだ。
悲運か、悲劇か ―
しかしパンターニは、そのスキャンダルの矢面に立たされる。
英雄は絶望の中に突き落とされた。
孤高の天才クライマーはそれから6年のち、イタリアの安宿の一室で、一人きりで死を迎えた。
不慮の死、34歳の若さだった。すべてのイタリア人は衝撃を受け、悲しみに沈んだ。
自転車と共に生きたサイクリスト。人生、その表と裏、真実を見つめていく。
人間vs山岳路、アスリートvs 組織、そしてパンターニは、彼自身と対峙する。